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地域医療構想に関する報道について


病院長 亀岡 伸樹

 9月27日厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の内容が新聞等で報道されました。当院が「再検証要請対象医療機関」に挙げられ、新聞の見出しなどでは「再編が必要」などと表現され誤解や憶測を呼んでいます。報道をご覧になった皆様も様々な思いをお持ちになられたことと思います。
 ご心配をおかけしましたが、この件について、碧南市民病院がなくなってしまうとか、他の病院に統合されてしまうということではありません。
 今回の報道内容についての背景、経緯、そして今後の方向性について説明します。



背景

 日本では先進諸外国に比べても少子高齢化が急速に進んでいます。既に日本の人口は減少し始めており、2025年には後期高齢者の増加がピークに達します。税収の減少、年金制度の危機、就労可能人口の減少など社会構造の変化が進み医療・介護のあり方について見直しが必要となっています。これに対応する大きな方針が「地域包括ケアシステム」と「地域医療構想」の二つです。
 地域包括ケアシステムは、医療と介護が一体となり、在宅を中心に高齢者が地域で暮らすことを地域で支えるシステムを構築しようとするものです。病院としては、急性期を過ぎた患者さんが在宅にスムースに移行できるように退院調整や介護との連携を進めること、在宅で状態が悪くなった亜急性期を受け入れる地域包括ケア病棟の開設を進めてきました。


地域医療構想

 人口問題の一つの節目である2025年を目途として、各地域で2025年に必要とされる医療の内容を予測してそれに則した医療体制を作る必要があるという考え方で都道府県が主導して検討の場が設けられています。愛知県では「地域医療構想推進委員会」が地域ごとに設置されており、「地域ごと」の単位は二次医療圏となっています。二次医療圏というのは都道府県の「保険医療計画」をたてるための単位で当院は「西三河南部西医療圏」に属しており、碧南市、西尾市、安城市、刈谷市、知立市がこの医療圏になります。
 2025年までの人口の変化、それに伴う医療需要の変化予測から、2025年におけるその医療圏の必要病床数が計算されています。当医療圏の現在の病床数は2025年の必要病床数と比較して、総数では充足しており、病床の削減は迫られていません。
 「地域医療構想推進委員会」(以下推進委員会)は公の会議ですが、この医療圏の病院・有床診療所が集まり「西三河南部西医療連携推進ネットワーク」(以下ネットワーク)という組織を作っています。当医療圏ではベッド数の削減は必要ないので競合関係になることなく、病院間の連携や協力体制を話し合うことができる組織になっています。


今回報道のあった「地域医療構想ワーキンググループ」での論議

 地域医療構想は、2025年に「効率的で質の高い医療を提供する」ことを目的としているのですが、多くの医療圏で現在の病床数は必要病床数より過剰となっているため「ベッド数を削減する計画」ではないかと捉えられ様々な軋轢が生じています。
 各地域での取組がなかなか進まずベッド数の削減計画が進んでいないことから、厚生労働省にワーキンググループができました。公立・公的病院の診療実績のデータから、その病院がその地域で役割を果たしているかどうか(疾患ごとの患者数の推計値)、近隣病院で同じような事をしていないか(病院間の距離も考慮)が検討され、今回の報道にあるような結果が発表されました。


今回の報道を受けて

•ニュースの見出し等では「再編が必要」などとされていますがこれは正しくありません。病院を廃止するとか他の病院に統合するという意味ではありません。地域医療構想の目的は「2025年に質の高い医療を医療圏のなかで効率的に提供できる体制を作ること」なのでその議論を進めるための資料の一つとして下さいということです。
•データは正確でありません。今回使われたデータは平成30年6月の一か月分の医療提供の実績を元にしています。このことは各方面から不正確であると指摘されており、その点も考慮にいれて今後議論することになります。
•全国一律の計算式で機械的に線引きをしたものであり、地域の実情に基づいたものではないことはワーキンググループでも認められています。ですから地域の推進委員会等でこれから再検証をすることになります。
•当院は「がん」「心筋梗塞」「脳卒中」「救急」について診療実績には問題がないと評価されています。今回「再検証を要請」とされたのは「類似」「近接」した病院があるため、となっています。データの解析についての詳しい資料はまだ公表されていないのでこのような結果になった詳細はわかっていません。


今後の方向性

 今回の結果の基になったデータを取得し検討します。特に「類似」「近接」の意味合いがはっきりしないので情報を詳細に解析します。
 推進委員会で議論することになりますが、その前に院内での検討、ネットワーク会議での検討を行っていきます。
 今後推進委員会では今回のワーキングの結果のみならず、病院の築年数や、医師の働き方改革による医師数不足なども考慮にいれて、2025年にむけての体制を検討して行くことになっています。ネットワークでは2040年までも視野にいれ協力体制を進めることを考えています。

 今回のワーキングの結果如何に関わらず、社会構造の変化に対応して病院も変わらなければならないのは確かです。当院だけではなく医療圏全体で、あるいは県域で、国全体での変化が求められているので、「現状維持」はあり得ません。当院のビジョンである「病院の価値」を高め維持しつつ、公立病院として当院のミッションを果たし、地域の中での役割を果たすことができるよう、今後も努めて参ります。皆様のご理解と、そしてご支援をお願い申し上げます。

令和元年10月1日